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「おそすぎないうちに」

風の気持ちよい晴れた日でした。
あの地震があったのは。

あわててつけたテレビで、津波で家が壊される映像を、呆然と眺めました。
そのうち、都心から帰れない人が大勢いると、冗談のようなニュースが入ってきました。
その上、さらに悪い冗談が。原子力発電所の事故。
もちろんその日は、何も手につきませんでした。

翌日、ライブを控えていました。
転好の兆しどころか酷くなる一方の状況に、昼のライブはキャンセルせざるを得ませんでした。
それでも夜のライブは不安を感じながらなんとか出ました。
新宿の、あの馴れた地下鉄への道が、まるではじめての街のようでした。

やがて、被害がみるみる明らかになるにつれ、今さらのように恐ろしさがこみ上げてきました。

街がひとつなくなるとは、どういうことか。
その具体性を、僕はやはり映像から以上には感じられないけれど。

街は家の集合で、家は人の集合だ。
大家族でも、一人暮らしでも、赤の他人どおしのルームシェアでも、
みんな「ただいま」という家があって、そこには温もりと言ったらきっと嘘くさい、何かが潜んでいる。

そんなことを思ったときに、この歌の意味がはっきりと分かったように思います。

「おそすぎないうちに」 作詞・作曲 中山真理



地震の被害は殆どなかった我が街でも、計画停電や物流の滞りがありました。
食料の買占めがあるなんて、電気の来ない時間があるなんて、数日前まで思いもしなかったことです。

「当たり前のこと」「あると疑わなかったもの」が崩れてゆく。

けれど、本当は「当たり前なんかじゃない」のかもしれません。

それを分かったところで、命も、物も、いつかは消えてなくなるものばかりだけど、
だからこそ、大事に感謝して生きていかなきゃならないのでしょう。


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