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帰去来

里帰りは、いつも所在ない。

「ただいま」と言うべきなのか、いつも少し迷うのだが、
かと言って、「お邪魔します」ではあるまい。

結局、かつてからは考えられない自然な声音で、「ただいま」と言う。

父親は、テレビを見たままで「おかえり」とだけ応じた。
白髪がまた増えていた。


荷物を降ろすと、そこは依然として僕の部屋であると感じる。

くつろぎ方を身体が覚えている。

と、寝転んでみて、思い直す。
何が僕の部屋だ。
都合の良いときだけやってきて、そしてまた逃げてゆくのに。

弟は、きっと僕を恨んでいるだろうと思う。
何を話して良いのか、お互い牽制した挙句がアニメの話だ。
ニコニコ動画で何が面白いだとか、何のゲームがやりたいだとか、だけど実は、お互いの趣味について具体的なことは全く共有してはいないのだ、僕たち兄弟は。
それでも、探り探りの会話は、これで結構盛り上がった。
そうでもなければ、里帰りとはなんと気まずい拷問になってしまうことだろう。
一緒に暮らしている時は、むしろ一言だって喋らずに夕食をとっても平気なのに、どうにも皮肉なことだ。


どこかに行こうと思いはすれど、あまり遠出も出来ず、なにか勿体無くも思えて、いつも家の周囲をぶらつくだけで終わってしまう。

かつて覗き込みもしなかった小径で、旧い街並みを写真に納めて歩く。
まるで僕は旅行者のよう。

ついにひとりの友達にも会わなかった。
当たり前だ。知らせていないのだもの。
どんな顔して会ったらいいのかわからない。
みんな、大人になっているはずだ。
会わなくて、良かった。

犬も慣れてきた頃、
帰る日になった。
帰る、のだ。
やはり、僕の家は、あそこにあるらしい。

「いってきます」と言うべきなのか少し迷って、それでもごく自然に「いってきます」とつぶやく。

父親は、背中を向けたまま「いってらっしゃい」とだけ告げた。
パソコンで、ソリティアをやっていた。

変わらないな、と思った。
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